峠とカフェ

町近くの峠を登り切ったところにある広場で、ベンチに座り山を眺める。

誰もいない。山を見ながら、やはり帰りたくないと思う。山の中で暮らせたら、どんなに楽しいことか。根拠もお金も所縁もないのに、何故だかそんな気がしてならない。

私は山に何を見出しているのか。不思議だ。

 

この町で評判のカフェのオープン時間になったので、峠から町に降りる。

 

町に似合わぬアメリカンな名前のそのカフェは、古民家を改築したような味のある建物に入っている。大きなガラス張りの窓からはこれまたアメリカンな内装が覗かれる。

カフェモカを頼んで、通りに面したカウンターで啜った。

大抵のカフェって、カウンター席をガラス張り窓の前に作ってるよねえ。
私、一人でコーヒー飲んでる姿を人に晒すのちょっと恥ずかしいのだけど。そういうお洒落に溶け込むのが、オシャカフェ客の義務なのかもしれない。店側からしたら、文句があるならテイクアウトして虫がぶんぶんするベンチで飲めばいいじゃないって話よね。

ここのカフェは高評価なだけあって、カフェモカがめちゃくちゃうまい。
まずミルクがうまい。フォームミルクの泡がスカスカじゃない。こってりとした濃厚な泡。そこに絶妙に溶け馴染んでいるコーヒー。
これはすごいぞ。